恋は遙かに綺羅星のごとく

        Euph.作


皇紀弐千六百八拾年 拾月 拾六日 金曜日
国立大江戸特別芸能高等専門学校 文芸部部室
「――で? 説明してもらおうか、土岐彼方(とき かなた)。――なぜ貴様は日も差し込まぬこのような薄暗い部屋に篭り、
美少女ゲームのアレなシーンを絶賛鑑賞しつつ、大東亜でも数人といまい国民的アイドル級の美少女を連れ込んでいる。――なにをしていた?
――なにをするつもりだった? ――何故この娘は泣いている!? ――返答と事のいかん次第では貴様――わかっているな!?」

 ……どうしてこうなった。
 オレの首を今にも圧し折ろうと、その大きな目の目尻に溢れんばかりの涙を湛えてオレの首根っこを掴み、前後にブンブンしている小柄なロングポニーの少女がいる。
こいつが琉璃夏だ。オレの唯一の文芸部の同志で名を毛利琉璃夏(もうり るりか)と言う。今朝、八千代と出会うまでは、何かと仲間外れにされがちなオレが対等に話せる唯一の相手であり、
良き遊び相手でもあった幼馴染だ。琉璃夏は一見すると垂れ目がちの大きな目を持つ愛くるしい美少女然とした容姿を持つ小柄な少女だが、その言動を聞いてもらっても判る通り、彼女はその趣向がちょっと普通じゃない。
今世のヒゲ伍長衝撃隊隊長を自称するほどの枢軸マニアであり、かつサバゲー大好き少女であった。また、普段の学校生活では泣く子も黙る風紀委員会に所属する恐怖の代名詞として恐れられている。

「何故貴様は答えない!? そんなにこの少女が気に入ったのか! そんなにこの少女に惚れたのか! そうまでしてこの少女が欲しいのか!!
貴様はなにが不満なのだ! 吐け! このノンポリめ! 唾棄すべき無神論者め! この私を差し置いて、不順異性交遊など断じて認めぬ!! 絶対にだ!!」
「あの……」
思うところがあったのか、八千代が口を挟んだ。
「黙れ貴様! 今はこやつと大事な話をしておるのだ!」
く、苦しい……。放してくれ、琉璃夏……。
「ふ、ふはは、ふはははは!! そうか、そうなのだな!? 貴様カナタ、この一連の出来事はこの私をこの大江戸特芸高専風紀委員と知った上での嫌がらせなのだな!?
頼むからそうと言え、この少女に気があるからではなく、この私に嫌がらせをしているだけなのだと!! そうでなければ、貴様がこの私にわざわざ菓子を買いに行かせる理由がない!
私がここに来るとわかっているのに、他の女と仲良くしてみせる道理がない! そうであろう! そうと言え! 言うんだカナタァ!!」
……。
「あの、そなた……」
「黙れと言っている! ――そうか、貴様から修正されたいのだな!?」
「カナタが口から泡を吹いておる――さっきから様子がおかしいのではないか?」
「!?」
早く気づけ、琉璃夏。お前のそういうところが残念なのか、どうなのか。とにかくオレは意識を失った。